・富士光学工業 "フジコーF型"シャッター
富士光学工業のF型ライラ各種に付いていた「フジコーF型」シャッターです。
確認した限りではセミライラ・ライラシックス・ライラックス・ライラフレックスに装備されていました。
F型は恐らく昭和十六年の発売だと思われ、他にセルフタイマー付の「フジコーJ型」も有った様です。
(撮ってあった写真の都合で、同型のシャッターが複数混ざっておりますがご了承下さい)
レンズを外してシャッター単体を正面から見た所。
シャッター速度の変更はドイツ製コンパーシャッターと同様に外周リングを回して行います。
速度はT・B・1・1/2・1/5・1/10・1/25・1/50・1/100・1/200の10種です。
此れ以前のシャッターでは最高速度が1/250でしたがF型からは1/200になっています。
中央の押えリングネジ(何故か切り欠きは1箇所しか無い)を外すと前板が外せます。
因みにこの前板、傷が付いたりして他の綺麗な奴と交換しようとしても
加工精度が低いのか往々にして穴位置が合わなかったりして出来ない事があります。orz
速度変更リングを外して内部を見た所。
「セミライラII型」が装備していた「フジコーB型」は「コンパー」のコピーでしたが
「フジコーF型」は一見して「プロンターII」のコピーで有る事が判ります。
最高速度の変更も恐らくコピー元の変化が原因なのでしょう。
左下のスペースはセルフタイマー機構用だと思われます。
「フジコーJ型」では此処にセルフタイマーを入れたのでしょうか?
シャッターユニット固定ネジを外します。
コピー元と同様3本のネジで固定されていますが
上写真右端、レリーズケーブル金具付近のネジだけは
レリーズレバーを押した位置で無いと抜けません。
抜いたユニットをケースから外して裏から見た所。シャッター羽は3枚です。
絞りは写真左側のケース側に組み込まれていますが、やはり面倒臭いのでバラしません。
シャッター羽は単に挿し込まれているだけなので簡単に外れます。
羽の形状は3枚共同じなので分解前に記録しておかないと位置が変わってしまいます。
・・・まあ、それでも特に問題は無い様ですが。
このシャッターも構造上スローガバナー部分がシャッター羽の裏へ直に来ますので
注油し過ぎはシャッター羽貼り付きの元です。
以下ちょっと気になった事など。
理由は良く判りませんが、富士光学工業は何故か独自規格のシャッターを使っています。
普通戦前の国産メーカーと言えば、六桜社も浅沼も藤本も、大体ドイツ規格のシャッターです。
しかし上写真の通り、固定ネジサイズからして違っています。
(左写真はドイツ製「バリオ」シャッター、右写真は「フジコーF型」)
お陰でセミパールやマミヤシックスがドイツ製コンパーシャッター等を移植出来るのに対し
ライラシリーズはシャッター交換も他機種へレンズ移植も出来ません。
これは現在実用する上で非常に不利な状況であると言えます。
気になった事その2。
上写真はどちらも「フジコーF型」シャッターの物ですが
付いていたレンズのナンバーから右の物は左の物より後の生産だと推定されます。
左側シャッターケースは内面も、まあ、まともな状態です。
右の方は仕上が荒いのか加工面に光沢が無く、しかも鋳造の際に出来た「巣」が散見されます。
F型ライラ各種の販売は昭和十六年に入ってからですので
恐らく日米開戦後は工員・資材の不足から、見えない部分については多少目を瞑り
仕上の省略や検査基準の引き下げを行ったのだろうと思われます。
こう言った品質の低下はライラばかりでは無く、同時期のセミミノルタ等でも見られます。