・フリードリヒ デッケル
"コンパー"シャッターの修理(その1)
コンパー系シャッターの0番サイズの物にはセルフタイマーが内蔵されて居り
上に突き出したボタンで作動させる事は皆様ご存知の事と思います。
しかし写真機も数が集まって来ると、上写真の様な破損した個体も手元にやって来ます。
一体どうしてこんな所を壊したのか理解し兼ねますが、これではセルフタイマーが使えません。
今回は偶に見かけるこの破損を何とかしようと云う試みです。
此方は別の機体に付いている「正常な」コンパーシャッターです。
ご覧の様に、円盤を重ねた様なデザインのボタンが付いています。
セルフタイマーはBとT、それと最高速度1/250以外の速度域で使用可能です。
(コンパーラピッドなら1/400)
取り敢えず、分解する為にレンズボード裏側のリングネジを外し
シャッターユニットを引っこ抜きます。
今回の素材はテッサーレンズ付きのバルダックスです。
詳細は端折りますが、レンズを抜いて前板を外した状態の裏側です。
セルフタイマー操作ボタンはどうやらシャッターユニットのケース側に付いている様なので
裏側の固定ネジ3本を外してシャッター機構部分とケースを分離させます。
ケース側、セルフタイマーボタンの折れた部分です。
(ドライバーで指し示している所)
パーツそのものは板金細工をケースにリベット止めしてあります。
これでは外す訳にはいかないので何か追加加工しないといけません。
そこで代用ボタン用にこんな部品を削り出して見ました。
使用した素材は、偶々手元に有った0.5mmの純銅板です。
幅3mm、長さ12mmに切り出した小片を只管鑢掛けして行きます。
同じ部品を裏返して見た所です。
何分現物合わせで削って行きましたので寸法を示す事が出来ませんが
背景の升目は10mm方眼ですので其の辺からご想像下さい。
折り返した先端は、縁に沿ってピン状に削ります。
この辺、作業していていい加減嫌になって来ますが
可愛いバルダックスさんをフルスペックで活用する為に
もう少し頑張りますw
今度は本体ケース側の追加加工。
φ0.6のピンバイスで本体側に残る板金部品に穴を開けます。
出来上がった穴の位置はこんな感じです。
表面に引いてある2本の線は、ボタンが収まるケース側切欠き位置を示しています。
此処に先程加工した代用ボタンパーツを半田付けします。
銅板で作ったので半田の乗りは上々です。
裏側にも半田を盛っておきます。
但し、余り盛り上げ過ぎるとシャッター部品に干渉しますので
その辺を考えて程々にしておきます。
シャッター機構部を仮組みして位置チェック。
ここで当ったり擦れたりする部分が見つかったら機構部を外し
再度鑢で削り込みます。
機構的には単純に棒が生えているだけでも充分なのですが
シャッターチャージレバーを操作した時、及び写真機本体へ組み込んだ時に
夫々干渉しない様、先端の形を少々曲げたり削ったりしました。
シャッターユニットを組上げて干渉チェック。
先ずは通常のシャッターチャージ位置。
レバー先端に当っていません。
干渉チェックその2。
セルフタイマーセット状態。
ギリギリではありますが接触しないで済みました。
切込み部分にも問題無く入り込みます。
実際に作動させて動作チェック。
「ジジジ・・・」とタイマーが作動し、約10秒後にシャッターが切れました。
何とか修理完成です!
しかし、ボタン破損以来セルフタイマーは作動していない筈ですが
軽く注油しただけでちゃんと動く当時のドイツ製品テラスゴス。
そんな訳でこのバルダックスさんは無事機能を回復致しました。
尤も、その後シャッター羽に油が染み出して再度分解する羽目になったり。
ううーん、中々上手く行かないものですね。(;´Д`)
セルフタイマーボタンが取れてしまったコンパーシャッターはもう1個有るので
機を見て其方も修理したい所です。
・・・まあ、載せるべきボディの方でまともなモノが足りなかったりしますが。
折角なのでセルフタイマーを作動させた所を動画に撮って見ました。
背景に何が写って居ても(゚ε゚)キニシナイ!!w